AKIRA
晴明はやっとめどのついた書類を机にぽんと放った。
ここ一週間というもの、不本意ながらも仕事に追われていたのだ。
今更ながら、自分の立場に嫌気が差す。本当ならこんな会社など処分してしまいたいくらいなのだが、博雅が止めるのだ。この仕事をやめてしまったら、おまえは本当に社会と縁を切ってしまいそうでだめだと。
だから、こうやって時々、たまりまくった仕事を片付けに不肖不精やってくるのだ。
もう、一週間、博雅に会っていない。
でもやっと、今日には向こうに帰ることができそうだ。
(どうしているかな…。)
博雅よりも自分の方が、会いたい気持ちが強いのではないかと思う。昨日は電話があったが、今日はこちらからかけても出もしない。
一体、どこで何をしているのか。
(何もかも、知っておきたいと思う俺は、わがままなのだろうか…)
窓から、暮れ始めた空を見ながら少し自戒する。
「おい。晴明、いるかっ!?」
突然の声に驚いてドアのほうを振り返ると、そこには、今まで晴明の心を占めていた博雅本人が立っていた。
「びっくりしたかっ?」
いたずらっ子のように、にやっと笑った博雅。
「いったい、何でここに?」
一週間ぶりに見る博雅の笑顔はまぶしかった。
「俺も、今日はこちらに用があったんだ。友達が入院しててな、見舞いに行ってきたところさ。」
後ろでドアを支えていた秘書に軽く会釈すると、ドアを閉めた。
「でも、びっくりしたぞ。この部屋まで来るのに絶対、苦労すると思っていたのに、受付で名乗っただけで、まっすぐここまで案内されたぞ。いったい、どうなっているんだ?」
前にここまで来た時は、あらゆるものを強行突破してきたのを思い出す。
「お前が、いつ訪ねてきてもいいように、ちゃんとしてあるだけだ。」
しかし、まさかそれが今日とは思ってもいなかったが。
博雅は部屋を横切り、晴明の座る机まで歩いてくると、その上に両手をついて上半身を傾けると晴明にそっと口付けた。
「もう、一週間も会っていないんだぞ。寂しかった…。」
博雅から口付けてくるなど、めったにあることではない、その証拠に、もう頬が赤い。
晴明のほうも、驚いて声も無い。
「何とか言ってくれないか?なんだか俺だけ、ばかみたいではないか。」
自分からしたくせに、博雅はそこから先どうしていいのか途方にくれてしまった。会えなかった寂しさからつい、口付けてしまったが…。
「晴明、晴明と連呼するな。ここでは、私の名は稀名明だぞ。」
「あ、そうか。すまん。しかし、中身は一緒だろう?」
「そう思うか?」
「違うのか?」
「試してみるか?」
そういうと、机に付かれたままの博雅の両手を引っ張って、机の上に身体ごと引っ張りあげる。机の上におかれた書類の山が、ばさりと床に広がって落ちた。
「おい。書類が落っこちたぞ。」
「関係ない。こっちを見ろ、博雅。」
博雅のあごを捕まえて無理やり自分のほうを向かせる。その博雅の唇に噛み付くように口付ける。頤に力をこめて口をあけさせると、さらに口付けを深めてゆく。
「…ん…ふっ…」
博雅は、息もできない口付けにめまいがしそうだった。
執拗に晴明、いやアキラの口付けは止まらない。確かに晴明とも違う、アキラのやりようだった。
大きな社長用の机の上に、上半身を押さえ込まれた博雅。着ていた革ジャンとその下のシャツをアキラの手が器用に脱がせてゆく。
少し厚手のフランネルの濃紺のシャツの下には下着など着ていない。ボタンを外すたびにその下から、つややかな博雅の肢体があらわれてくる。ためらいも無くその滑らかな首筋に舌を這わせる。噛み付くように博雅の肩まで晴明の唇が這ってゆく。
「晴明…。こんなところで…」
息遣いがどんどん荒くなってゆく博雅。
「晴明ではない。アキラだ。そう呼べ。」
実際ここ一週間と言うもの、アキラとして仕事をしていたせいもあって、晴明の頭の中はアキラにスタンスが移っている。名とは呪だ。晴明でありながらも、彼の中には同時にアキラという別人格も存在している。
「アキラ…。」
「そうだ。」
博雅のピンク色の突起を見つけると、きりっと親指と人差し指でねじる。晴明のときとは違うキツイ力の入れように、博雅の身体がびくっとはねる。
「あっ…つっ…!」
「痛かったか…?でも、気持ちいいだろう?」
耳元でささやくアキラの声もやはり晴明とは違う。やさしいソフトな声。
「私は優しそうに見えるとよく言われるが、本当は晴明などより、よっぽど意地悪だと思うぞ。ふふっ。」
「…。」
ささやかれるその言葉にどきりとする、博雅。
アキラは自分の首からネクタイを抜き取り、博雅を抱き起こし机に腰掛けさせると、両手を後ろ手に交差させ、縛り上げてしまう。
「な、何をするんだ…?」
両手の自由を奪われて、動揺する博雅。
「言っただろ。私の方が意地が悪いと。」
シャツの前をはだけ博雅の両の乳首をつまみあげる。あまりの痛みを伴う刺激に博雅の悲鳴が上がる。
「ああっ!…つっ!…晴明!やめてくれ!」
「晴明ではないといっているだろう。」
さらにつねりあげる。
「あああっ!!」
体がのけぞる。
「さあ、私はだれだ?」
「ア、アキラ…」
じんじんとしびれる両の乳首に意識が飛びそうになりながらもやっと答える。
「そうだ、忘れるなよ」
つねりあげていた手を外すと、紅くはれ上がったそこに舌を這わす。痛みで敏感になっているそこにあらたな刺激を受けて、博雅の嬌声が上がる。
「ああっ…!」
「なんだ、これくらいでもう感じてしまっているのか。これは大変だな。」
意地悪く、笑うアキラ。
博雅のジーンズの前をあけると、すでに立ち上がりかけている博雅のものをあらわにする。その先端は先ほどの乳首への刺激のためか、うっすらと露が滲み始めていた。
羞恥に頬が染まる。
「もう、こんなにさせているのか?博雅。」
博雅のものをなで上げながらアキラが耳元でささやく。
「なめてほしいか?」
博雅の頬をぺろりとなめてアキラが言う。博雅は晴明とあまりにも違うその態度に驚いて声も無い。
熱いアキラの舌になめあげられて、博雅のそれがびくんと揺れる。さらにその硬さを増してゆく。アキラの熱い咥内がその硬さを飲み込んでゆく。博雅の視界に晴明、いやアキラの頭が、自分のそこで蠢いているのが目に入る。
見たくないと思う心と、目が離せない自分。
みだらな音をたてながらアキラの口淫が続く。身体の自由を奪われていることで、いつもよりさらに感じ方が敏感になっている博雅。身体が熱い。我慢しようとしてもどうしても声があがってしまう。
「…うっ!」
もうイってしまいそうだ。と、急にアキラの口から開放される。
イク寸前で止められてしまった。身体の中の熱が行き場を失って博雅の中で暴れているようだ。身体が熱い。
「まだだ。博雅。」
そういって博雅を、自分の座る椅子の前に膝まづかせる。手は縛られたまま、シャツをはだけた上半身と自分のものをさらけだしたままのその姿。ジーンズの開いたそこから天を向いて博雅のものが突き出している。あきらによって散々なぶられたそれは今にもはじけそうだ。
「今度はおまえの番だ。博雅。」
スーツのパンツの前をあけると博雅のそれよりはるかに大きい自分のものを、博雅の口を開けさせて、含ませる。
「…うっ…。」
喉の奥まで届くのではないかと思うようなその大きさに、博雅の唇は塞がれてしまった。
「さあ、どうする、博雅?おまえのしたいようにして良いぞ。」
優しい声で言ってはいるが、それは静かな強制だった。
おずおずと博雅の舌がアキラのそれに這い始める。
「…んっ…んんっ…。」
アキラのものを一生懸命に含む博雅の表情、長いまつげがほんのりと染まって色づいた頬に影を落としている。軽くしっとりと汗が浮かんでいる額。その額にゆるくカールした髪が乱れ落ちている。何をさせてもめちゃくちゃ可愛い男(やつ)である。
一週間も会えずにいた腹いせに、もう少しアキラとしていじめてやろうかと思っていた晴明だったが、その博雅の表情にもう、これ以上我慢などできなくなってしまった。
博雅の口を外させるとそのまま身体を、自分の上に抱き上げる。
ジーンズを脱がせてその長い足を自分の足で割る。
「せい…めえ…。」
自由を奪われたことで、いつも以上に感じまくってしまっている博雅、アキラと晴明の区別などもうどうでも良くなってしまっている。ただひたすら、目の前の白い貌のこの男を求めている。名などどうでもいい。この男が欲しい。
晴明の大きく屹立したものが博雅の奥まった秘密のそこへあてがわれる。挿入の予感に博雅の体が震える。解されてもいなかったのに、博雅のそこは静かに収縮を始めている。
「挿れるぞ、博雅…。」
耳元でささやくと、博雅の滑らかな双丘を持ち上げて大きく開き、自分のものをずぶりと差し入れてゆく。
「あああっ!!」
博雅が喉をのけぞらせて声を上げる。
「…くっ…。」
あまりの締め付けに晴明の唇からも声が漏れる。
「あ…はあっ…。」
晴明のそれを根元まで飲み込んだ博雅。自由のきかない身体で身をよじる。自分の中の晴明が大きさを増してゆくのを感じていた。
晴明が博雅の腰を抱えあげて上下に挿入を繰り返す。隠微な音をたてる博雅のそこ。
「いやらしい音を立てているのは、もしかして博雅のここか?」
意地悪にそういうと晴明のそれを飲み込んでいるそこを指でなぞる。
「…ああっ!…晴明の…ばかっ…たれ!…あっ!」
ほおを染め涙目になりながらも、悪態をつく博雅。
「なんだ。まだまだ、そんな悪態をつけるのならもう少し、いじめてやろうかな。」
楽しそうに笑う晴明。
「ばかっ…!アキラでなくとも…晴明…おまえだって…充分…いじわるだっ!あっ!…くそっ!」
晴明にさらにゆすられて意識がぶっ飛びそうになりながらも、言い返す博雅であった。
「くくくっ!」
大きな社長室に博雅の泣声がひびくのはもう少し後のこと…。