引越し
晴明が博雅の邸へ正式に引越してきた。朝から引越し業者が来て荷物を運んでいるが、なにしろ変なものが多い。
「晴明、これはなんだ?」
小さなしわしわの柿の干したようなものが、いくつか並んでガラスのケースに入っている。
「ああ。それは首だ。」
「首…?首って!なんの!?」
ぎょっとして博雅が聞く。
「人の首さ。首かり族の長に貰ったんだ。」
当然のように言う晴明。
「首かり族って…おまえ…。」
(どこいったんだ、いったい…?)
博雅は声もない。
「じゃあ、これは何だ?何に使うんだ?」
荷物の中から見つけた台形のような形の青銅でできた斧のようなものを手に取り、しげしげ眺めて聞く。
ちらっとそれを見やると、晴明は面倒くさそうに答えた。
「それは,インカ帝国で使われた生贄の心臓を取り出すための聖なる斧だ。」
「い、生贄って…。うへえ、ホントかよ。こんなの個人で持ってていいのか…?」
博雅の目は、好奇心でらんらんとしている。
他にも天球儀やら地球儀やら星図盤。怪しげなものが満載である。記憶などなくても充分、陰陽師の商売ができるだけのものが揃っている。それから何しろ大量の本の山。
博雅も本は読むほうだが、これは半端ではない。
「晴明。この本、全部読んだのか?」
次々運ばれる本の山を見ながら聞いた。
「なんだ?いちいち、うるさい奴だな。読んだからここにあるんだろ?」
業者にてきぱきと指示を出している晴明にとっては、横に張り付いて何だかんだと質問してくる博雅は、引越しのときの子どものように邪魔だった。
「ちょっとこっちこい、博雅。」
業者に簡単に指示を出すとその場を離れながら、博雅を手招きする。
「なんだ、なんだ?」
嬉しそうに博雅がついてくる。
(ほんとにガキか、お前は…)
博雅を寝室までつれてくるとその手をひっぱって、部屋のなかへと引きずり込む。
「わわっ!!」
そのまま、ベッドの上に放り出される。
晴明がぱぱっと上に着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
そのまま博雅に覆いかぶさる。
「な、なにするんだ晴明?」
何だかいやな予感がする。
「お前はちょっとここにいろ。邪魔でしょーがないんでな。」
晴明の顔がせまってくる。
「邪魔って!俺は別に邪魔などしてないぞ。」
心外だとばかりに眉間をしかめる博雅。
「いや。普通に邪魔だ。だから、ここでいい子にしてろ。」
言うと、博雅に反論する隙を与えず唇を覆う。。
博雅の唇をを割り、その柔らかな舌を捉える。重ねあう。
性急にからまってくる晴明の舌に、博雅はくらっとめまいをおぼえた。
思わず声が漏れる。
「んん…ん。」
晴明の手は博雅のシャツのボタンを外している。
すべてのボタンを外し、前を空けると晴明の唇が博雅の唇を離れ、首筋を下へと移動してゆく。鎖骨に舌を這わせ、その桃色の突起に舌を遊ばせる。
ジーンズの前をあけ、手を滑り込ませてゆく。博雅のそれをそっと冷たい指で包み込む。
「あっ…。」
ひやりとした晴明の指の感覚に思わず声が上がる。
「おい…引越しの最中だぞ。まずいって…。」
何とか理性をかき集めて博雅が言う。
「お前がうろちょろしているよりはましだ…。」
「な、なんだって〜!?」
「いいからじっとしていろよ…。」
ジーンズを脱がせると博雅の長い足を大きく開く。博雅が身を捩る。
「ちょっ、ちょっと!晴明っ!待てって!やめろ…!」
恥ずかしさに顔が紅潮している。だが、晴明の手は博雅の膝をガッチリ捕まえて動かさない。
「お前のここはいつも可愛い。」
博雅の制止の言葉など完璧に無視して、そう言うと博雅のそれに軽く口つける。
「あっ!!」
晴明は博雅のそれを己の咥内へと徐々に飲み込んでゆく。暖かい晴明の口の中を感じて博雅の理性は跡形もなくふっとんだ。
「ああっ!!」
晴明の長い手が博雅の口をふさぐ。
「あまり、大きな声を出すとさすがに誰かに気づかれるぞ。博雅。」
今日の家の中は引越しのための業者でいっぱいだ。扉一枚向こうに誰がいてもおかしくない。
「うっ…。」
唇をぐっとかみ締めて声をこらえる博雅。
本当は結界を張ってあるので、そんな心配は無用なのだが罰の意味もこめて、そういうことを晴明は言ったのである。こういうときこそ発揮される晴明の根性悪さである。
自分の手で必死に口を押さえて声を出さぬようにする博雅。
(だまされちゃって…可愛いやつめ)
博雅のそんな姿にさらにそそられる晴明。かわいそうなのは博雅…。
しばらく後…。
「しばらく、そこで大人しくしていろよ。」
にやっと笑って晴明は部屋を出て行った。
「ばっか…やろお…。」
しっかり晴明に本懐も遂げられて、ぐったりして動くこともままならない博雅であった。
そんな引越しの一日。
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