水しぶき (終)
「ん…?晴明…?」
自分の隣が沈んだのを感じ、くしゃくしゃに乱れた髪をかきあげて博雅は枕からうつぶせていた顔を上げた。
「起こしたか、すまないな…。」
博雅のすぐそばに体を寄せて晴明が低い声で囁いた。その腕が博雅の体にそっと回る。
「んにゃ…大丈夫。ただ…体がすっごくだるいけどな…。」
困ったように笑って博雅が掠れた声で答えた。
「それより、いったいどこに行ってたんだ、こんな真夜中に?」
「いや、ちょっと野暮用。」
「野暮用?なんだか含みのある言い方だな…、いったい何だ?」
片肘をついた博雅が不審げに晴明を見上げて聞いた。
「色々と、…それより目が覚めたのなら…」
「うわ。」
仰向けにひっくり返された博雅に晴明の顔が迫ってくる。
「ん…」
博雅の唇を割って晴明の舌が滑り込んだきた。
重ねあわされた舌の熱さに博雅の体がびくりと反応した。
「…んふ…」
博雅の鼻から甘い吐息が漏れる。
舌下をなぞり、さらにそれをきつく吸い上げて晴明はいったん唇をはずした。
「…は…」
博雅のぬれた唇から、晴明の舌を追ってきた震える舌先がほんの少しのぞいている。その唇を人差し指と中指でそっと開かせると晴明はそのまま自分の指先を博雅に舐めさせる。
「せい…」
「…ほら…」
声を発することを静かに止められ、博雅は黙って晴明の指に舌を滑らせ始めた。硬い指先の皮膚の感触が舌を刺激する。滑らかに濡れて光る別のものを脳裏に浮かべて博雅は一心に晴明の指に舌を這わせた。
「…んん…は…ふぅ…」
「なんだ、博雅、俺の指で感じているのか?」
ぴたりと寄り添って横たわる晴明の足を、固く立ち上がった博雅のものが下衣越しに押していた。
「指などでは物足りない?」
博雅の唇から指を引き上げる。
「そ、そんなこと…」
戸惑っておどおどと答える博雅。
濡れて光ったその唇、清純さをなくしてはいないその顔とは対照的に、まるで雄を誘っているかのような妖艶さを見せるそのふっくらとした唇。
そうさせたのは他のだれでもない自分なのに、晴明の目が不機嫌さを浮かばせて細められた。
「お前はこういうとき、色っぽいな…博雅…」
伏目がちにそっと目を開けて晴明を見上げる博雅の目を見つめて晴明は言った。
「は?…ば、ばかいうな…。俺なんかの…どこが…」
「俺でなくても誘われる、…この唇…」
晴明はそう言って博雅のぬれた唇を少し力を入れて指の腹で撫でた。ふっくらとした下唇がその形を崩す。それさえも誘うように見えて。
「だから、あんなこまっしゃくれた妖しのガキなんかに目をつけられるんだ。」
「目をつけられるって…お、俺は子供じゃない…」
「知っているさ…子供なんかじゃない…俺のものだ」
博雅の耳に唇を寄せて晴明が囁く。甘い吐息と低い声が博雅の耳元をくすぐる。
「…人を持ち物み…たいに…言うな…」
あがってゆく息をむりやり抑えながら博雅が言い返す。
「お前がなんと言おうと勝手だが…俺のだ…」
晴明の手が博雅の胸を滑り降りて敏感になった胸の蕾を襲う。その小さな頂点を両方同時にきゅっと捻りあげる。
「ああっ…!」
博雅の背がシーツから浮き上がるほど仰け反った。晴明の指先が博雅のそれをぐにぐにと押しつぶす。
「ひ…っ…、い…や…やめ…」
目の隅に涙を浮ばせて博雅が身をよじる。それでも晴明は愛撫の手を緩めない。顔を下にずらすと片方を指から外し、赤く充血をはじめた小さなそれにぺろりと舌を這わせた。痛めつけられて敏感になったそこを熱を持った晴明の舌に舐めあげられて博雅の声も上がったが、それと時を同じくして晴明の足に押し当てられていた男の印もまた、その大きさを増した。
「こんなにすぐに反応していたのではいけないな、博雅…」
博雅のものを下衣越しにざわりと撫で付けて晴明は言った。
「こんな調子ではまた、あいつに襲われたら今度はしっかりと応えてしまいそうだ。あいつは今頃しっかり躾け直されているはずだが、この際、博雅、おまえも躾けなおしておいてやろうか」
ぼうっとし始めた博雅の頭の中が今の晴明の言葉で現実に引き戻された。ふるふると頭を振って晴明を見上げた。摘まれたままの乳首に意識が飛びそうになるがなにやらそれどころではない嫌な予感がする。
「な、なにを言ってるんだ…?」
晴明の目つきがよろしくないのを見つけて、博雅はその体の下から抜けだそうと試みた。が、晴明の方が力が強い、肩を押さえ込まれて身動きができなくなってしまった。
「博雅、お前ってやつは人のいうことを聞かないのが悪いところだ、今回のことだって俺に何の相談もなく、咲也のガキにまんまとそそのかされて水着のコンテストだか品評会だったかに出たのがことの始まりだろう?」
「し、知ってたのか…」
あんなものに出たことをまさか晴明が知っているなどと思いもしなかった博雅、声がおどおどしてしまった。
「ちゃんと、式が知らせてきていたさ。」
「し、式…、いったいいつの間に…」
「お前みたいなトラブルメーカー心配で野放しなんかにできるか。」
「ト、トラブル…メーカー…って」
またもそれを言われて博雅がぐっと言葉につまる。一番言われたくないあだ名だ。
「…それなのにいつの間にやらあのガキにとらわれているし。てっきりもう帰っているものかと思っていたのに、とんだ裏をかかれたものだ。…今度からは遠くからではなくお前の背中にぴったり式を張り付かせようか?」
「い、いや…そ、それは…」
どこからどう見ても本気で言っているとしか思えない晴明の言葉にうろたえる博雅。晴明のやっていることは、ほぼストーカーに近いというのにそんなことにも気づかないらしい。
「…なら、博雅、お前の体に、トラブルに巻き込まれるとどういう目に合わされるかおしえておいてやろうか…?」
「ど、どういう目って…だ、誰にだよ?さ、咲也くんのことなら、お、俺は自分ひとりでもきちんと対処できるぞ。」
「誰があのお子様のことだって言った?」
「だ、だって…ひっ…!」
博雅の体がひくんっ!と、跳びはねた。晴明の手が博雅のそれをぎゅっと握りこんだのだ。
「博雅、もしお前が誰かほかのやつのものになったとしたら…」
握りこんだそれに力がこめられてゆく。
「俺は自分が何をするか自信がない…。きっと、理性をなくす…。」
「ま、まさか…お、お前に限って…そ、そんなことが…あるものか…」
晴明の手からゆっくりと力が抜け、せき止められていた血の流れがどっと博雅の先端に向かって流れ出す。じんじんと痺れるような感覚のそれに今度はやさしいまでのタッチで晴明の手が這う。手のひらの上でもてあそぶかのように博雅のものに触れる晴明。理性をなくすだろうと言うのは何かの間違いではないかと思えた。
「いや…俺は自信がないな…。だから、まだ理性のあるうちに、お前に少し…教えておいてやるよ」
「だから…なにを…」
「俺が嫉妬に狂ったら、なにをやらかすかってことをさ」
そういうと晴明は博雅の下衣をぐいっとひざの下まで押し下げて博雅のものを晒した。
「や…!」
「痛い目にあわせるつもりはないが…動くなよ」
博雅のものを手のひらの上にそっとすべらせたまま、晴明はもう片手を博雅の目の前に広げて見せた。
「…なに…?」
ゆるゆると施される愛撫のような動きに少しばかりぼうっとした博雅、晴明の手の平のうえでうごめく小さなものを見つけた。
小さな細いミミズのようななにか…。生き物のようにも見えるが、それには目もなければ口も何もない。
ただウゴウゴとのたうつように晴明の手の上で蠢いていた。
「な…なんだ?…そいつ…」
博雅のくちもとがヒクッ…と引きつった。
反して晴明はニイッ…と嗤う。
手のひらに乗せたそれに向かって、晴明がフッと息を吹きかけた。
その息にのるかのようにして、そいつがひょいっとその手の上から跳んだ。
「うわああっ!」
そいつが晴明の手の上にあった博雅のそれに、くるくると、まるで蛇のように螺旋を描いて巻きついてゆく、博雅の口から悲鳴が上がった。
「せ、晴明っっ!や、やめろっ!!」
がっしりと肩まで押さえ込まれて動けない博雅、じたばたと暴れてみるが、ほんのわずかしか身長の違わない晴明の力に勝てない。
やがて、するすると下の方から巻き上がっていった生き物のようなそいつの頭に当たる部分が最後にその小さな鎌首を上げると、博雅のものの頂点のその小さな入り口にツプッ、と潜り込んだ。
「ひい…っ…!!」
博雅の身体が大きく仰け反る。
「や、…ひ…やめ…」
全身にじわりと汗を滲ませる博雅、初めての感覚に声が出ない。
「大丈夫…ちょっと蓋をさせてもらっただけだ。そいつは何もしない。…少しばかり蠢くくらいさ。」
晴明の甘い息が博雅の耳元をくすぐる。
「あ、後はちょっと締め付けるかな…。」
そう付け加えるとクスリと微笑った。
「ま…まて…って…、晴…やめ…あっ!」
きゅうっと締め付けが始まった、博雅の言葉が途切れる。
「もし、おまえが本物の妖しに捕まったりしたならどうなるか…。あんな咲也のように甘い単純なやつばかりではないんだぞ…。」
そういうと晴明は博雅をうつぶせにして、締め上げられつつある博雅のものに背後から触れた。
「たとえば、こうやってお前から生気を吸い取り廃人にしてしまうこともありえる。…まあ、その前に散々弄りつくされるだろうがな。」
博雅の先端にもぐりこんだそれがもぞもぞと蠢く。
「ひ…」
博雅はその異様な感覚にひゅっと空気を吸い込み小さく悲鳴を上げた。
もぐりこんだその小さなものの脇からじわっと蜜が溢れ出した。いくら蓋をしようが博雅が今の状態に感じてしまっていることは明らかだった。
「あいつらは巧妙だ、人がどうやったら我を忘れて快楽の淵に落ちるか知っている。そうしておいて人の生きる力のすべてを奪う。…あのガキだって同じさ。博雅、お前を捕まえたらお前の生きる力をすべて奪ってただ自分のためだけにお前を飼うことぐらいやりかねない。どんなに人のふりをしていても所詮は妖しに過ぎないからな。ま、己の欲望に忠実なのは俺もさほどかわりはないのかも知れないけれどな。」
言いながら晴明の手が博雅の双丘を割り開いた。数時間まえには晴明のものが埋め込まれていたそこは、まだいくらか熱を持ったようにうっすらと桃色に濡れて艶めいていた。ぐいと開かれて恥ずかしげにひくひくと引きつっているそこを、晴明の指先がまるで何かの呪をかけているかのようにゆっくりと円を描いてなぞってゆく。
「あ…はあ…ぁ…」
四肢を突っ張るようにしてうつぶせられた博雅、その面があがると、ぎゅっと閉じられたまぶたに反して力なく唇が開き、色めいた声が上がる。
晴明の中指が一本、博雅の開かれたそこへと沈み込んでいく。
「は…あ…っ」
その内壁が晴明の指に絡みつくようにひくひくと蠢く。中が柔らかく解けていると知って晴明はさらに指を増やす。
二本…そして三本…。
三本もの指を難なく飲み込む博雅の後孔を晴明の指がゆっくりと抜き差しされる。きつく中まで突っ込まれたかと思うと、あっという間に引き上げて…。その喪失感にたまらず博雅の腰が揺れる。
「や…抜かない…で…」
シーツを握り締めて博雅が小さな聞こえないほどの声で懇願する。
「博雅…、そんなかわいいこと言うから…やられそうになるんだ…ばか…」
「ばか…って…言う…な…」
息も絶え絶えに博雅が返す。
「そんなせりふも俺だけにしておけよ」
晴明は低くつぶやくと博雅のもので濡れた指を引き抜き、小さく開いたそこに己の屹立をあてがいそのままぐっと腰を沈めた。
「ひ…あっ…」
晴明のものが狭い襞を押しのけるようにして力強く侵入する、同時に博雅のものを絡めとった晴明の呪がぎりっと絞まった。逃げようとする博雅の肩を自分のほうへとぐいと引き寄せる晴明、掠れた声を上げる博雅の背に己の体をぴたりと沿わせる。
俯いた博雅の顔を無理やり自分の方にねじ向け、その濡れた唇を奪った。
「…んん…ん」
晴明の舌が博雅の舌に絡みつき、きつく吸い上げる。
「…せ…晴明…く…くるし…」
わずかに唇が離れた隙に博雅は涙を浮かべて訴えた。が、晴明は冷たく微笑むだけで博雅の唇を再び覆った。嚥下しきれぬお互いのものが博雅の唇の端から銀の糸となって零れ落ちてゆく。
「…ふ…っ…んん…」
眦をほのかに上気させる博雅。
「その顔も俺以外のものに見せてはいけない…わかっているだろうな、博雅…」
晴明の手が博雅の腹を滑り呪に絡めとられた博雅の屹立に届いた。器用な指先が熱を持った博雅のそれをさらに煽るように嬲る。嬲られて博雅のものがどくりとさらに質量を増した。
「う…あっ…!」
逆に晴明の呪がぎりりと締め付ける、痛いほどの締め付けに博雅の唇から思わず声が漏れる。逃げようとする博雅を晴明の熱い楔が繋ぎとめる。
「たとえ人ではなかろうと…不可抗力だろうと…許さないからな。」
「そ、そんな…」
「言い訳は聞かない。」
「…ああ…っ…あ…っ…」
激しく抽送される晴明の分身に博雅のそこから淫らな粘液があふれ出しシーツに染みを作ってゆく。ぎりぎりと痛みをともなって締め付けてくる晴明の仕掛けた呪と、そこから脳天に向かって這い登ってゆく後孔を穿がたれる快感に博雅の意識はまるで白い闇の中へと飛翔してゆくかのようだ。
「わかったな…?」
晴明の声がまるでもやの向こうから響いてくる神霊の声にすら聞こえて博雅は思わず答えを返していた。
「…わ…わかってる…よ…っ…」
その答えに晴明の口元にうっすらとではあったが満足げな笑みが浮かぶ。
「晴明…」
「なんだ?」
「イキ…たい…」
晴明のものに穿たれてはいるが締め付けられた自身は放出することを許されず博雅はまだ達することができずにいる。普通なら先ほどの抽挿でイッもおかしくはないはずだった。…なのに腰に熱が溜まってゆくばかりで頂点に達することができない。体中が熱く燃えているようなのに何だ、これは。
「まだ、ダメだ。俺のことしか考えられなくなるまではな。」
にやっと笑った晴明の目が怖い。
「ダメって…どういう…意味だ…」
「俺が許可しない限りお前はイケないってことさ。」
「まさか…」
自身を捕縛する呪。
「そういうこと…」
「はっ…は…あ…っ…」
ヘッドボードの体をもたせ掛けた晴明の胡坐をかいた腰の上で、晴明の体に縋りつくようにして博雅の体が揺れる。大きく開かれたその両足の間で呪に絡みつかれた博雅のものが、ぬるつき艶めいて、晴明と博雅のからだの間で震えている。晴明の手によって限界まで広げられた秘蜜の場所が晴明の屹立を根元まで飲み込み、また外界へと送り出すことを繰り返していた。
「く…っ…ああっ…!」
晴明の強い指先がぎりっと博雅の滑らかな臀部を鷲掴みにし、自身の熱い楔をさらに博雅の奥へと叩き込んだ。博雅の背がのけぞり大きく声が上がった。
反り返った晴明の熱茎が博雅の中をぐりっと抉る。抉られたそこから博雅の背をとてつもない快感が駆け上っていった。
「あああ…っっ…!」
晴明の肩に置かれた指先に力がこもり、その手の甲に博雅の額が当てられた。滴る汗がその首筋を流れる。はあはあと大きく息をあえがせて博雅はその苦しげな顔を晴明の肩に寄せた。
「晴…明…も…もう…」
汗に濡れた髪を額に張り付かせて博雅は悩ましげな瞳で晴明を見た。上気した頬にうっすらと開いた唇が破壊的なまでに色っぽい。
(まったく…こんな顔をするから心配なんだ、俺は…)
自分以外にはこのような顔をするとも本気で思っているわけではないのだが、それでも晴明は心配なのだ。素直で、たとえ相手が妖しだろうがなんだろうが簡単に心を開く博雅、何に対しても疑心暗鬼で見てかかる自分とは違うその純粋な魂が心配でしょうがない。
できるものなら自分の腕の中に閉じ込めてどこにも行かせたりはしたくない。
もちろんそんなこと現実にできるわけもなく。
心はいつだってお前のところのあると、博雅は微笑む。
それは重々承知だ。
自分の心だってお前に繋がれてしまっているのだから。
それでも、本当に繋がっているときにはしっかりとその身に言い聞かせておかねば。
自分は誰のものなのか。
まるで偉そうに博雅に言い聞かせてはいるが…本当は自分が一番心配で不安なのだと晴明は知っている。
誰にもとられたくはない。
この濡れて脈打つ身体も、いつまでも穢れることを知らないその魂も…そして自分を誘うこの瞳も…。
濡れた髪の間から、欲情に煙る博雅の瞳が晴明を見つめてくる。
「晴…明…」
その瞳に、晴明の熱茎がどくんと博雅の中でまた質量を増した。
「なんだ?博雅…」
はちきれそうに欲望がそこにたまってゆくのを知りつつ、晴明は何事もなかったように聞く。
「もう…だめ…だ…」
目元にじわりと涙の粒を浮かべて博雅が晴明の肩にすがりつく。
「だめ…?」
その耳に甘く低くささやく。その間も晴明のそれは博雅の中をゆっくりと円を描くように捏ね回しその身を翻弄する。
「あう…っ…」
小さくしまったその臀部にもじっとりと汗を浮かせて博雅がのけぞる。
「なにが?」
のけぞった博雅の喉仏から鎖骨にかけてゆっくりと舌を這わせながら聞く。
「…イ…イキた…い…」
熱く荒い吐息に切れ切れになりながら消え入りそうな声で博雅が言った。晴明の肩にその顔を押し付けているから表情など見えはしなかったが、きっと真っ赤になって目を閉じているだろう。
「さあて…どうしたものかな…」
博雅の左足の膝裏を持って掴み上げるとさらに結合を深くした。
「やあ…っっ!」
大きく開かれた脚の間で呪に纏いつかれた博雅のものがビクビクとその可憐な身を捩った。いつもは薄い桃色のそれが今はいつもより色を濃くして博雅の限界を教えてくれている。
「せ、晴明っ…!もう…やだ…、これを…」
博雅の震える手が自身のそれをつかむ。
「とってほしいか?」
眦に涙を浮かせてこくこくとうなずく博雅。
「今度、今日みたいなことがあれば次はこっちにも呪をかけるからな…ちゃんと覚えておけよ。」
晴明の指先が、自身とつながり合った博雅の柔らかく解けた後孔の襞をなぞった。
「あ…」
びくんとそこが反応して晴明のものをきゅっと締め付けた。
「…く」
晴明のそれを隙間なくぴったりとその中に閉じ込めて博雅の中が熱くうねる、普段はあまり声を出さない晴明が唇をかみ締めて声を殺した。
晴明自身ももう限界が近い、熱く怒張した自身をギリギリまで博雅の中から引き出すと、博雅に取り付いた呪具に手を触れ、解呪の文を息だけで紡ぐ。
しゅるんと博雅の身から滑り落ちる呪具。
それが外れるタイミングを見計らって晴明は引き抜いた熱茎を博雅の中に力強く打ちこんだ。
「ひあ…っっ!…あああっ…!」
晴明の肩に指先を食い込ませて博雅は大きく声を上げた。
晴明の手が開放された博雅を激しく扱く。留め置かれた露がその頂点からどくどくとあふれるようにこぼれだす。塗れた淫らな水音が部屋の中にはっきりと響く。
自らその細腰を揺らして博雅は晴明のものに何度もその身を貫かせた。
「俺だけにしておけよ…っ!博雅っ!」
これ以上はないほどの深さで博雅を貫きとめる。
「はあ…っっ…!!」
晴明のものが博雅の最奥でその熱をほとばしらせるのと時を同じくして博雅の分身もまた、晴明の手の中でその情熱を放った。
せき止められていたせいで勢いのついた博雅の熱い白濁が晴明の胸と博雅自身の胸に飛び散る。胸にべったりと飛んだそれを指先で掬うと晴明は、それを達してぼうっとしたままの博雅の唇に塗りつけた。塗れて艶めく桃色の唇に白く濁ったそれがつうっと垂れ落ちる。
「晴…明…」
塗れて震える博雅の唇から呼ばれる自分の名。
「博雅…」
華のように微笑んで晴明が口づけた。
「…甘い」
博雅の唇を彩る情熱の名残を舐めとって晴明がにやりと笑った。
「…ばか…甘いか、そんなもの…」
ふわりと唇を開いたままの博雅が小さく言い返す。
「嫉妬深いやつ…」
続けて博雅の唇から漏れる言葉に晴明が眉間に皺を寄せた。
「嫌か…?」
「いや…逆。こんなにボロボロになるまで求められて嫉妬されて…お前になら殺されても本望さ。」
頬をまだうっすらと上気させながら博雅は怖いことをさらっと言った。
「俺はいつだってお前のもの。…だろ?」
黙ってしまった晴明にさらに言う。
「でも、お前だっていつだって俺のものなんだからな。そこのところ、ちゃんと覚えておいてくれよ。」
「…博雅」
「お前が浮気でもしたら、もしかしたら俺の方が怖いかもよ?」
にっと笑って博雅が晴明の顔を引き寄せた。
「まさか」
晴明もにやっと笑う。
「…試してみるか?」
「ばあか」
ぎゅっと博雅を抱きしめて晴明がその耳元で小さく言った。
博雅の心の大きさに救われるのはいつだって俺の方だ、と心の中で呟いた。
「ところで、野暮用ってなんだ?」
博雅が思い出したように言った。
「なんでもない。ほんとに野暮用…」
晴明が答えた。
二人がそんな甘甘な頃…。
「よるなっっ!!河鹿っ!」
どこかの湖の底にある豪奢な屋敷の一角。
部屋の片隅追い詰められた咲也、顔面蒼白である。手にした枕をまるで楯のように構えて壁にぴたりと背を貼り付けていた。
「咲也さまん…」
ぬらぬらと光る手が咲也に伸びる。普段なら河鹿など簡単に操る咲也、それができないところを見るとどうやら晴明が、咲也か河鹿のどちらかに何かをしていったようである。
が、今の咲也にはそんなどころではない様子、自分の身を守るのに必死であった。
「や、やめろ…。よ、寄るな…」
「うふ…」
「うふ、じゃねえっっ!!」
「や!…やめれ〜〜〜〜っ!!!」
断末魔のような咲也の悲鳴が普段は静かな湖面を揺らした。
終劇。
ようやく終わった…改稿しまくってごめんなさいっ!!
ちょいやばへ。