バレンタイン …博雅のバアイ
「バレンタインの災厄」…博雅の場合。
「は、謀ったな…晴…明っ…!」
頬を上気させ息も荒くなりながら博雅が憎らしげにすぐそばで腰をかけて優雅に足をくむ男を睨んだ。
「謀ったなんて、なんて人聞きの悪いことを。ちょっとばかり特別に味付けをしただけさ。」
クスクスと笑う晴明。まるでクリームをなめた猫のようにご満悦である。
いったい何があったかというと…。
「晴明、なんか言ったか?」
「いや、なにも。ひとつ食べてみろって言っただけさ」
「いや、その前になにかいわなかったか?」
「さあ、空耳だろ」
そんな会話だったのに。
三つばかりチョコを食べてそれから小一時間もたったころから博雅の体に変調が起こり始めた。
ソファに座って昨日買ったばかりのミステリを読んでいた博雅、ただ座っているだけなのに妙に落ち着かなくなってきた。なんだか体のどこか深いところから何かがふつふつと湧き上がってくるようなそんな妙な感覚。
もぞもぞと腰の位置をなおして座りなおしてみるのだがどうにも落ち着かない。
なんだ?この変な感じ…。
目の前の本の文字が頭の中に入ってこない。それどころか手のひらにじっとりと汗までかいてきた。腰のあたりがじん…としびれたように重い。
変だ、変だ、なんだこれは…。
博雅はついに本をとじてソファに背を預けるとふううっと大きく息を継いだ。
「どうした?」
部屋に入ってきた晴明が博雅の様子を目に留めて声をかけた。その声に博雅はびくっと体を揺らせた。
「晴明…」
閉じられたまぶたを明けて頭上の晴明に目をやる博雅。すでに熱を帯びたようにその黒目がちの瞳はウルウルと潤んでいる。
「どうした?なんだか具合が悪そうだな」
博雅の隣に腰を下ろす晴明。その手が博雅の額にかかった髪を掻き揚げる。
「あ…」
そんなわずかな接触に博雅はぎゅっと目を閉じる。唇がひとりでに開いてなまめかしい声が小さくあがった。
晴明が触れている額が熱い…いや、そこから全身に熱が波状のように広がってゆく。
「な、なんだ…これ…。お、俺…おかしい…」
自分の体をぎゅっと抱きしめて博雅は震えた。
「おかしくなんかないさ…」
そういってにんまりと微笑む晴明に、博雅はとっても不吉なものを感じたのだった。
途端にピンときた。震えながらもぎろっと、にこやかに微笑む目の前の男をにらみつける。
「いったい俺になにを…した…っ…」
「なんにも」
「なんにも…ってことがあるかよ…なんだっ!…これは…っ」
「おいしかっただろ?チョコ」
「チョ…チョコ…?ま、まさか、さっきのあれに何かしたのかっ?」
「ちょっとばかりね」
「…な、なにがちょっとばかりね、だ!は、謀ったなっ!せ、晴明っ!!」
「謀っただなんて人聞きの悪い。ちょっとばかり特別に味付けをしただけさ」
そういって晴明は怒る博雅の体をソファに押さえ込むと、そのきっちりと止められたシャツに手を伸ばした。優雅な細い指先が器用に一番目のボタンを外す。
「な、なにをやってんだよ…」
「ボタンを外してる。」
「そんなこたあわかってるっ!そいつを外してどうするんだよ、って聞いてるんだ!」
「うるさい奴だな。量が足りなかったかな?なにしろあんなもの作ったの久々だったからな」
博雅の抗議などどこ吹く風の晴明。ぶつぶついいながら博雅のボタンを次々に外していった。
「や、やめろって!まだ日も高いんだぞっ!」
じたばたと抵抗する博雅。
「そう、そいつが問題だ。」
「も、問題ってなんだよっ!」
最後のボタンを外すべくズボンにたくし込まれたシャツのすそを引き出す晴明にむかって顔を真っ赤に染めて博雅は声を上げた。
「大体においてお前は照れ屋にもほどがある。ナニの時だって暗いとこでばっかりヤリたがるし。」
「あ、当たり前だっ!あんなもの明るいところでするもんじゃないだろっ!」
「…面白くない奴。暗いとお前の顔もこの綺麗な体もなんにもろくすっぽ見えやしないだろうが。」
すっかりとシャツのすそを引っ張り出した晴明の手がまだ合わさったままの博雅のシャツのまえをバッと広げた。
「あっ!」
「こんなに綺麗なものを暗がりに隠すのは罪だ…」
「ばっ!ばかっ!何ふざけたこと言ってんだっ…!あ…っ!」
博雅の抗議の声が尻切れに消えた。
晴明の唇が滑らかな博雅の胸に咲く小さなピンク色の頂に触れたのだ。
「今日はせっかくにバレンタインだから本当はこのあたりにチョコのひとつも塗りつけたほうが感じがでるんだろうけど…、ま、いいか。」
舌先を尖らせて博雅のかわいいともいえる小さな突起をツンと突いて晴明はニヤッとした。
「ば、ばかっ…!そんなところにチョコなど…ぬ、塗られてたまるか…あっ…!」
乳首の周りをぐるりと舐めあげられて博雅はぶるりと体を震わせた。晴明に盛られた薬のせいか、いつも以上に体が敏感になっている。
「そう嫌がられるとなお、やりたくなるのが俺のよくないところだな。」
「な、なに??」
紙のカサリという音が聞こえて博雅はあわてて頭を上げた。
見れば晴明の手に小さなチョコが乗っている。
「な、なんだ、それっ!?」
「なんだって、見ればわかるだろ。」
「や、やめれって!」
何をされるかピンときた博雅、おたおたとあわてふためく。
「いやいや、遠慮するな」
博雅の手首をまとめてその頭上に留め置くと晴明は溶けやすい生チョコを博雅の胸にそっと乗せた。
「生チョコのいいところは、なんたって溶けやすいところだな。」
などと言いながら博雅の胸に咲く蕾にぬりぬりと楽しげにチョコをぬってゆく、実に楽しそうである。
「あっ…!」
晴明の指先がするすると博雅の敏感になったちいさな蕾の上でチョコとともに滑る。ぷにっ、と押しつぶされた蕾が戻ってくる指先にまた引きおこされる。繰り返されるのは、そんな小さな動きなのにもかかわらず、博雅の体は反対に反応を強めてゆく。
チョコにまみれた突起もだんだんと硬く尖り始めていった。おまけにじわじわと妙な熱が乳首を覆ってくるのを感じる。
「ああ…っ…なに…?あ、熱い…」
額にうっすらと汗を滲ませる博雅。
「これはさっきおまえに渡したチョコの残り。じつはこいつには口からでなくても皮膚からでも吸収できるという大変優れた特徴がある。」
戒めていた手を離して晴明は博雅の両方の乳首をツイッと摘み上げた。
「あ…くうっ…!」
戒めを解かれたことにも気づかず両の腕を頭上に上げたままの博雅、先ほどまでの言葉の勢いはどこへやら、背中がソファから浮き上がるほどにその背を仰け反らせた。
「いつも以上に感じるだろ?ん?」
れろりと耳朶に舌を這わせて晴明は博雅の耳に甘く低く囁いた。
「…は…っ…」
博雅の唇が悩ましげに吐息を吐く。きつく閉じられた瞳の端にじわっと涙が浮かんできていた。
「実においしそうだな…」
楽しげにつぶやいた晴明、溶けたチョコでコーティングされた小さな蕾に尖らせた舌先を触れさせた。チョコを舐め取るために舌の先にクッと力を入れて博雅のそれを強く舐めあげた。先ほど晴明の指で散々嬲られて感じやすくなっているところに持ってきてさらに媚薬と舌での責め苦である。たまらず博雅は声を上げた。
「ああっ!」
乳首から下半身の中枢へまるで電流のように快感の波が走る。じっとしていることができずに、内腿が博雅の意思とは関係なく摺りあわされる。
「ひ…っ…!晴…明…っ、や、やめ…」
体をしっかりとソファに縫い止められて、さらに強く舐められ吸い上げられて、博雅は晴明の下で身も世もなく体を捩らせていた。
「やめれるものか…なにしろ俺はまだおまえからバレンタインのチョコとやらをもらってなかったからな。」
そういってもう片方のほうも同じように舌を這わせ始めた。
「あ…あ…」
ビクッと体を震わせる博雅。
「これでチャラにしてやるよ。博雅」
にんまりと微笑む晴明。まるで獲物を捕まえた猫のように悪そうである。
れでも
「バレンタインってのは楽しいな、博雅」
博雅の胸に塗られたチョコを舐めとりながら晴明はクスクスと笑う。
「俺は甘いものはあまり得意ではないが…これは特別だ」
「んんっ…」
じわじわと広がる熱に博雅の鼻から甘い息が漏れる。胸から離れて晴明の顔がさらに下へと向かう。軽い髪がさらさらと博雅の肌を掠めてゆく、そのわずかな感覚にも博雅は耐え切れないほどの快感を感じてしまう。
「あ…ん…」
ぎゅっとこぶしを握り締めてそれに耐えようとむなしい足掻きをする様子がなんともいえずにそそる。普段は暗い中でしか見ることのできないものだ。夜目の利く晴明には見られないものではなかったが、それでも明るい中で見る博雅の肌の艶めきはまた趣を異にしたものがあった。
少し色の濃い肌ではあるが明るいためにその肌がほんのりと色づいているのがよくわかる。しっとりと湿った肌が晴明の手に吸い付くようだ。
ちゅ…ちゅ…
博雅の体に小さな音をわざと立てて、口付けながら晴明は目的の場所へと向かう。
はだけられたシャツの一番下までやってくると晴明は躊躇なく障害物以外の何者でもない腰のベルトをはずす。
カチャカチャという金属質な音が静かな部屋の中に響く。今から何が行われようとしているのか前触れを告げるかのような音に聞こえて博雅はさらに頬が熱を帯びてくるのを感じた。
「やめ…ろ…って…」
飛びそうになる意思を必死にかき集める博雅。震える手で晴明の肩を押す。
「なぜ?」
手をとめもせず聞く晴明。
「だって…明るい…」
「なんだ、恥ずかしいのか?」
「あ、当たり前だ…っ」
「ふ〜ん…でも、俺は全然恥ずかしくない」
ニッと笑って晴明はよいしょと博雅の最後の砦であるズボンとその下の下着をひき下ろした。
「や!やめっ!!」
博雅が悲痛な悲鳴を上げる。
「なんだ、恥ずかしがってるのはおまえだけのようだな。」
じたばたと抵抗する博雅の腰を押さえつけて晴明は言った。
「ここはほら…。」
そういって博雅のものに指先を当てた。硬く張り詰め始めた博雅のもの、その頂点にあふれつつある先走りの露を掬って博雅の目の前にもっていく。
「…喜んでる」
ぺろりと指先をなめてあくどい笑みを見せた。
「ばっ!ばかっ!!」
ボッと瞬時に顔をまっかにして博雅は喚いた。
「馬鹿で結構」
博雅が怒っているのはただ恥ずかしいだけととっくに承知の晴明、嫌がる博雅のひざ裏に手を入れた。
「わあっ!」
ずいっと引き寄せられて博雅は声を上げた。
「静かに。」
博雅の足を押さえたまま伸び上がると、その鼻のてっぺんに口づけをひとつ落とす。それから唇にもひとつ。そちらの方は少々念入りに。舌先で歯列をこじあけてさらにその奥に舌を遊ばせる。
敏感になっている博雅はその舌までもが熱をもったように熱い。れろりと舌を絡ませてやると鼻から甘い吐息が漏れた。
「…んふ…っ…」
抑えられた両脚の間で硬く張り詰めた博雅のそれがゆらりとその首をもたげた。すかさず晴明の手がそれに添えられる。硬い手の平が裏筋をゆるりとなで上げると博雅の持ち上げられた腰がびくんっと跳ねた。
「ん…や…っ」
唇をふさがれたままの博雅、晴明の唇からわずかに逃れていやだと小さく首をふる。
「やっぱり量が足りなかったな。」
わずかに反抗されて晴明は苦く笑った。そんなに本気で薬を盛るつもりもなかったので最低限の量しか入れていなかったがこうもしつこく抵抗されると少し残念な気もする。
「ならば…」
量の足りなかった分は自分の力量次第だなとあきらめた。
最後にひとつ軽く唇にくちづけをおとすと、晴明は力量とやらを発揮するべく、その綺麗なおもてを博雅の脚の間に埋めていった。
「あ…っ!」
根元をしっかりと押さえられ、その先端から熱い晴明の口の中に迎え入れられて博雅は思わずその身をすくませた。少量とはいえしっかりと媚薬の利いている体である、その感じ方はいつも以上に激しかった。
一番神経の集まったそれを愛撫されたのである。ズクンッと体中を衝撃が走り目の奥に星が散った。
「だめ…だっ!晴…っ…!やめっ…!」
「やめるつもりなどないんだな、これが…」
いったん口から熱茎を開放すると博雅の片方の足を肩にのせ、しっかりとその細い腰を抱えなおす。目の前に濡れて揺らめく博雅のそれに優しいともいえる目をむけると、まず尖らせた舌先でその先端のくぼみを愛撫した。抉るように嬲ってやると博雅が甘い声で啼く。
「あ…ン…っ…」
いやいやと振れる腰をしっかり捕まえさらに舌をその茎に這わす。
「や…っ…」
開かれたそこに日の光の下でほんのりと色づく菊の座。ぴくぴくと小さく息づくそこに晴明の目が舐めるように這う。
博雅の茎を滴る先走りの露を指先にたっぷりと掬うと、博雅のものを口で愛撫しながらその秘密の座の真ん中にゆっくりと塗りつけてゆく。
「んあっ…!」
つぷりと潜り込んだ指に博雅の声が上がる。
「や…っっ…」
ずずっと根元まで差し込まれた晴明の長い指が博雅のそこをゆっくりと解しはじめた。それは決して初めてのことではないはずなのに博雅はいつもの彼とは思えないほどの反応を示していた。たった一本の指先だけでどんどんと上り詰めてゆく。
「あ…あ…」
痛いほどに張り詰めた自身のものに震える手が伸びる。
「だめだよ…」
博雅のものから唇を外すと、甘い声で晴明は言って博雅のその手をつかんだ。
「や…やだ…」
長いまつげに彩られた、いつもは理知的で澄んだ博雅の瞳が今は欲望に煙り、盛り上がる涙で霞んでいる。濡れた唇が艶っぽく半分に開いてピンク色に色づいた舌先がちらりと見えていた。
「今から俺がもっと気持ちよくしてあげるから、だからガマンしろよ…」
優しく笑って晴明が言う。
差仕込まれた指が更に本数を増やされた。倍になった指が博雅の中をやんわりとかき乱し広げてゆく。わざと感じやすい場所を避けて晴明は博雅をぎりぎりまで追い込んでゆく。
「ああ…もう…」
ふるふると震えだす博雅。媚薬と晴明にじらされたことでほとんど理性が飛びかけている。
「もう?なに?」
意地悪く晴明が聞く。
「…お願…い…」
「お願い?何を?」
頬に朱を上らせて博雅が噛み付くように言う。
「もっと…気持ちよくしてやるって…言ったじゃ…ないか…っ…」
「そりゃあ言ったけどな。でも、こんなに明るくってもいいのか?」
明るいからいやだって言ったことを盾にわざといたぶる晴明。こんな恋人をもった博雅はある意味実に不幸である。
「…ばかっ!」
頬を染めて声を荒げる博雅に晴明はこれ以上ないほどの優しい声で
「冗談だよ…。ちゃんとしてあげるさ」
晴明はそう言ったのだった。
「あ…」
博雅の唇が耐え切れぬ熱に開かれる。
大きく割られた長い脚を晴明の手が更に広げ、その中心で心もとなげに揺れる博雅の分身を捕らえる。
先走りと、一度放った自身の白濁でぬめるそれを晴明の手が握りこみ、ゆるゆると上下に扱く。
「俺以外のなにもわからぬほどに…」
博雅の熱茎を慰撫しながら晴明は、捕まえた恋人のものよりも質量の大きな自身のそれを、秘められた双丘の奥に咲く蕾にぴたりと照準を合わせた。
「う…あ…」
待ちわびた熱い情熱の塊。
いくら広げられ解されたといってもまだわずか指数本のみのこと。
博雅のそこは晴明の形のままにぐいぐいと押し広げられ、その身の中に晴明の形を覚えこまされてゆく。
晴明の腰が博雅の両脚の間にぴたりと密着した。
きっちりと根元まで収まったのだ。
「さあ…入った」
上体を傾けて博雅の耳元で晴明が囁く。
「い…や…あ…」
明るさと媚薬と囁かれる甘い毒のある言葉、博雅の意識がどんどんと理性から遠ざかってゆく。
それとともに晴明を飲み込んだ博雅の内部がきゅうっと収縮を始めた。
「…く…。まだ、だめだ博雅…。いい子にしてろよ」
震える唇を捕らえて晴明は笑う。
普段は闇に沈んでいる博雅の体が明るい日差しの下でほんのりと桜色に色づく。
口づけで濡れて艶めく唇、その中に垣間見える柔らかな舌先、しなやかに反る首筋…すべてが晴明の目を楽しませる。
「美しい…博雅…」
ゆっくりと己を博雅の中に抜き差ししながら晴明は言った。
ず…りゅ…
晴明のそれが日の光に似合わぬ闇の音を供に博雅の後孔を穿つ。
「あ…ああ…っ…」
体の中を流れる媚薬のせいかいつも以上にその中は熱く、晴明のものが己の中で動悸を打つのまでがビリビリと背筋を伝わり駆け上ってくる。
もう明るい日の光も博雅の意識の中にはない。ただひたすら晴明のものを体が欲していた。引き抜かれるそれを博雅の体が追う。
「だめだ…じっとして…」
「や…もっ…と…」
暗い寝室の中でさえ出た事のない言葉。動かぬように晴明の手の中で押さえつけられた腰が晴明のそれを求めて蠢く。
「わがままだな博雅…そんなに欲しいのか…?」
くすくすと楽しそうに笑う晴明。それに対して涙をいっぱいに溜めて博雅はうなずく。
「ほしい…わかってる…くせ…にっ…」
「くくっ…知ってるさ、勿論…」
そう笑うと晴明は自身を埋め込ませたまま博雅の体をくるりと裏返した。
「うあっ…!」
自身の中でぎゅるりと晴明のものが回転すると、思わず博雅の声が上がった。
明るい日の中できゅっと締まった博雅の双丘が顕わにされた。普段は日の光などあびることのないそこはさすがに色が一番白い。
「こういう風に見られることはめったにないからな。」
少し汗ばんだ博雅のそれを晴明の手がゆっくりと撫でる。
「…やあ…っ…」
ソファの背もたれと肘掛のところをぎゅっと掴む博雅。
「は…っ…は…っ…」
晴明のものが先ほどとは逆の角度で博雅の中を突き上げる。これ以上先へは進めぬソファの角に追い詰められて博雅の息があがってゆく。
濡れて艶めく博雅の秘められてあったはずの後孔を穿つ自身のもの。晴明はさらに博雅のそこを押し広げた。
隠微な粘着質な音を立てながら抜き差しされる晴明の分身。博雅のそこは赤く色づき、晴明のものを貪欲に飲み込む。
「博雅…すごいな…お前のここは美しく、そして貪欲だ…」
「…っ…やめ…っ…は…っ…」
顔をソファにぐっと押し付けて博雅は切れ切れの声の中で言う。いくら理性が飛びかけているとはいえそんなところを視姦されてわからないわけがない。
晴明の視線を熱いほどに感じて博雅はいやだと腰を振る。だが、それさえも晴明を煽るのみ。
痛いまでに開いたそこに更に激しく晴明は己の楔を打ち込む。まくれて肩のほうへとシャツがずり落ち博雅のしなやかな背までが日差しにさらされた。
晴明の手が博雅の背を這いそのままするりと体の前に回される。両の指先が博雅のつんと硬く立ち上がった胸の蕾を捕らえた。
指先に力を入れてその二つをきゅっと抓りあげた。
「は…あっ…っ…!」
しなやかな背を仰け反らせて博雅は顔を上げた。片手だけを胸の蕾から離すと晴明は空いたその手で博雅のあごを捕らえ、自分のほうを振り向かせる。博雅の背に上体を傾けてぴたりと沿わせると博雅の唇を再びつかまえた。半身をねじった辛い姿勢ではあったがその分結合しているところはさらに深くなる。
「…あ…んん…っ…っ…」
舌を絡ませられて博雅の声は塞がれてしまったが、塞ぎきれないその唇の端から互いの唾液が銀の糸となって滴った。
濡れて絡まる舌…刺激に啼く胸の蕾…最奥を突かれる秘められた華…全身に伝播する快感の波に博雅の眦から大粒の珠が零れ落ちていった。
「あ〜、こういうのを何て言うんだったかな…?」
ぐったりと力の抜け切った博雅をその腕の中に閉じ込めて晴明は機嫌よく聞いた。
「…知るか…」
晴明の胸に重い頭を預けたまま博雅は投げやりに答えた。
こちらは相方と違ってすこぶる機嫌が悪そうである。
が、晴明はそんな博雅の様子など気にならないらしい。しばらくう〜んと考えたあとこう言った。
「ああ、思い出した。『ハッピーバレンタイン』とか言うんだったな」
「…だ!誰がハッピーだっっ!!」
静かな部屋に博雅の怒号が響き渡った。
ちょいやばへもどります。