いつかどこかで(4)


「や…やめ…」
大きな深草の体が僕の華奢な体に覆いかぶさってきた。
深草の唇が僕の唇を覆う。舌下をそろりとなめ上げられて思わず体がびくんと反応した。深草の片手が器用に僕のシャツの前ボタンを外していった。
僕の傷だらけの薄い胸に深草の手が這う。
「な、なにするんだ…やめて…」
深草に胸の小さなつぼみをつままれて僕は深草の唇を半ば強引にもぎ離して言った。こんなひどい傷あと、本当に誰にも見られたくなかった。それなのに深草はその傷跡をいとしそうに舌先でなぞる。
「いや…っ…見るな…っ!」
体を必死でよじる僕に深草は息がかかるほど顔を近づけてささやいた。
「この傷はお前の命を守ってくれた痕だ。俺にはなによりも綺麗に見える…」
「え…」
そんな風に思ったこともなかったし言われたこともなかった僕は深草の言葉に驚いてしまった。一瞬、僕の体から力が抜けて抵抗がなくなった。
深草の硬い指先が傷跡をすうっとなぞっていった。
「あ…はっ…」
背筋をぞくぞくと何かが駆け上がる。僕の口から思わず声がもれ出た。
「史人…」
深草がそっと僕の名をつぶやいてその唇がまた重ねられた。甘く低い声で呼ばれる自分の名。まるで初めて呼ばれた名のように妙に聞こえた。
 
深草の手があまり抵抗のなくなった僕の制服のズボンの前を開いていった。下着の中に深草の硬くて大きな手のひらがもぐりこむ。
「…あっ!」
自分以外には触れられた事もないところに深草の手を感じて怖くなって僕は声を上げた。
「かわいい俺の史人…どこかの女なんかには渡さない…」
僕のものをゆっくりと擦りながら深草は僕の胸の小さな突起にくちゅりと舌を這わせた。
「…くあ…っ…」
そのまま熱くぬれた深草の口に中にすっぽりと乳首を捕らえこまれて僕のまぶたの裏に星が散った。
「お、お願い!や…、やめてっ!」
飛びそうになる理性を必死でかき集めて僕は叫んだ。
 
そんな僕の必死の訴えを無視して深草は僕のズボンと下着を取り去り、病気がちでろくな筋肉もない細い僕の足を大きく広げた。
「ちょ、ちょっと!や、…やだっ!」
悲鳴を上げて暴れる僕を動けぬように抑えると、その足の間に深草はためらいもなくその顔を伏せた。
深草の硬い唇が僕のものをその熱い口内に誘い込む。深草の舌がくわえられた僕のものの裏をそろりと這う。
「やあ!ああ…んっ!!」
経験したことのない、体を突き抜けるような快感に僕は今まで出したこともないはしたない嬌声を上げてしまった。
くちゅくちゅと深草の唇と舌が僕のものを捉えて上下する。あふれた唾液がぼくの硬く屹立したものをつうっと流れ落ちてゆく。
深草の力強い両手に押さえられて僕は力なく足を大きく広げて泣いた。
「うっ…うっ…やめ…て…」
深草は泣く僕のことなど気にもしてくれなかった。容赦のない愛撫はさらに続いた。
押さえつけられて動かすことすらかなわない体の、どこかわからない深いところから熱のようなものが沸きあがってくる。小刻みに震えだす体、じわりと全身に汗が浮かぶ。深草の舌が僕のものを別の生き物のように這い回るたびに僕はぐっと唇をかみ締めた。そうしていないと意識が別の場所に飛んでいってしまいそうだった。
それでも耐え切れずに声が漏れ出す。
「…ん…あ…っ…あ…」
その声にほんのわずか唇をはずして深草が僕を見上げてにっと笑った。
「かわいい声だな」
「な、なに言って…」
その時、深草のつめが敏感になっている僕のものの先端の亀裂をかりっと引っかいた。
「ひっ!…あああぁっ!!」
激しい刺激に思わず背がのけぞる。臀部の筋肉がぎゅっと引きつれて僕は深草の手の中に熱く白いものを迸らせた。
 
激しい快感にぐったりとして抵抗することを忘れた僕の足から片手を離すと、深草はその指先を僕のさらに奥、小さく硬く窄まった後孔へとあてがった。まだ生暖かさを残す僕の体から吐き出されたものを、そこにぬるりと塗りつける深草の指。なにをされようとしているのかにようやく気づいて僕はびくりと体をこわばらせた。
「ま…待って…!これ以上、な、なにを…」
「いいからじっとしてろ」
深草が悪そうな笑みを見せて命令する。
「うわっ!」
僕の体をソファにうつぶせに引き倒すと腰を持ち上げて、僕のそこをぐいっと開いた。
「やあっ!!やめてっ!!」
うまれてこのかた、そんなところを人の目にさらしたことなどない僕は悲鳴を上げた。
「かわいいな、史人のここは。」
僕のものからあふれたもので濡れたそこを硬い深草の指先がちょんとつつく。
「ひあっ!」
思わず背をそらせて僕は声を上げた。
「ヒクヒク引きつってる…まるで俺のことを待ってるみたいだな、史人」
ゆっくりと円をかくように深草の硬い指先が僕のそこに触れる。僕の先端から伝い落ちた蜜でやんわりと深草は僕のそこを解していった。僕は押さえつけられて身動きのできずにただ、されるがままになっていた。ただ、自分でも信じられぬほどに深草の指先によって体が熱くなってゆく。思わずかみ締めた唇から熱い息が漏れた。
「…っ…あ…はっ…くう…っ…」
握り締めた手のひらにも汗が滲む。
「もう…あっ…やめ…って…っ…」
切れ切れに必死で訴える僕の言葉にも深草はその手を止めようとはしない。
「やめるわけないだろ?おまえのここはこんなに俺のことを待っているのに…」 
「待って…なんか…」
答えられないうちに深草のその指が僕の中へつぷり…と侵入した。
「あっ!…ああっ!や、やだっ!」
自由なままの両手で深草の体を必死で押しのけようとしたが、力の強い体躯の大きな深草の体は僕ごときの抵抗ではびくともしない。
「あああっ!」
さらに入り込んだ深草の指が僕の中をかき回す。経験したことのないその痺れるような感覚に僕は思わず大きな声を上げた。
初めて知ったはずの感覚なのになぜか覚えがあった。
「ほら、お前のここは勝手に俺の指をどんどん飲み込んで行くぜ。よっぽど待っていたんだな」
笑みを含んだ深草の声が僕の上に降ってくる。
「待ってなんかないっ!ぼ、僕はそんなんじゃないっ…あっ!…いやっっ!」
もう1本指が入り込んだのを感じて思わず体が反った。
二本の指が僕の中を妖しくうごめく。
「あっ!やっ!…やっ…!」
目の端に涙があふれだす。どうして湧き出したのか自分でもわからない涙、悲しいわけでも快感のゆえでもない。ただ、頬を涙が伝ってゆく。どうして自分がこんなに泣くのかを考えようにも深草の愛撫に僕の脳は思考することをやめてしまっていた。
深草の指が僕を蹂躙してゆく。その指先が僕の熱いその中の一箇所に突き当たった。びりっと電気が走るように僕のものの先端に向かって激しい快感が突き抜けた。
「ひあっっ!!…あああっ!」
さっき放ったばかりの僕のものから再びあふれ出す甘い蜜。
やがて散々に僕の中を翻弄した指が引き抜かれ、代わりに深草の大きく屹立したものがその同じ場所にあてがわれた。
「や…?な…なに…?」
弄られてとろとろに溶けきったそこに熱い切っ先を感じて、うっすらと目を開けた次の瞬間。
おおきな深草のものが僕の中にまるで重戦車のように突っ込んできた。
「ひいっ!」
あまりの痛みに僕は引きつった悲鳴を上げた。めりめりと深草のものが情け容赦なく僕を引き裂いてゆく。
「いやだっ!…や、やめてっ!!」
額に脂汗を浮かべて泣く僕の髪に深草はうそのようにやさしい口付けを落として言った。
「だめだ、ずっと俺を待たせて挙句の果てに女なんかと付き合うといった、これはその罰だ。…我慢しろ」
ずりゅ…っと深草のものが隠微な濡れた音を立てて僕の後孔を行き来し始める。
「俺の動きに合わせて息をしろ。そうすれば楽になる」
腰をしっかりと掴まれて身動きのできないぼくは少しでも楽になるならと深草に合わせて必死で息を吐いた。
深草の大きなものがぐぐっとはいってくるときに、はあっと息を吐く。後孔はそれによって少し緩み硬い大きなものが入ってくるのに少し抵抗をなくす。痛みは引いたが息を吐いて緩んだことによって深草のものはさらに深く僕の奥へと入り込んだ。
「うあっ…!」
自分でもわからない体の奥のほうに硬いそれが当たって僕は声を上げた。背中をしびれるような感覚がかけ上る。甘い蜜を零し続けている僕のものがびくんと振れる。
深草の手が背後から回ってぼくのものを掴んだ。自分の吐き出したものでヌルつくそれを深草の手がしごき始める。自分で自慰をするのとは比べものにならないぐらいの快感が走った。
「や…あっ…あ…」
後ろと前の両方を同時に弄られて僕は声を上げた。
後ろをしっかりと捕らえたまま深草が僕の背に覆いかぶさり僕の耳元でささやく。
「さあ、おまえは誰のものだ?史人?」
あごを取ると僕のものでぬれた指先を僕の口に突っ込む。無理やり口を開かされ舌をその指先で弄られる。僕の唇の端から唾液のしずくが糸を引いてこぼれる。
「あ…あ…」
体の奥を突きまくられ僕はなにが何だかわからない嵐の真っ只中にいるようだった。
体中が性感帯にでもなってしまったかのようだった。
焼け付くような快感の中で深草がもう一度聞く声が届いた。
「さあ、だれのものだ?言わないとすぐに終わりにするぞ。」
ずる…と快感を与えてくれる熱い鉄棒を抜かれそうになって僕は思わず叫んでしまった。
「あ、あなたのもの!だ、だからやめないでっ!お願いっ!」
散々に弄られた僕の体にはもう理性など残っていなかった。
 
僕はそうやって深草の手に落ちてしまったのだった…。
 
 
広げられた足を胸につくほどに抱え込ませてぐいぐいと僕の中を侵略する深草の硬い男のしるし。
「は…っ…」
とろんとした目の端をほんのりと桃色に染めて、僕はいつのまにか深草のリズムに合わせて身体をゆすっていた。
「かわいいな史人…」
ソファに腰掛けた深草の腰をまたいで僕の両足は大きく彼に向かって開かれていた。その僕の両脚の間に硬くそそり立った深草のものが根元までしっかりと納められている。切なげに蜜を漏らす色の薄い僕のものを深草の手がゆっくりと扱いていた。僕の腰を支えていた深草がその顔を上げてふっと笑った。
妙に自信に満ちた大人びたその笑顔。
 
どこかで見たことがある…
 
熱に浮かされたような頭の片隅で僕はそんなことを感じていた。その僕の頬に深草の大きな手が沿わされた。その硬い手のひらが僕の後頭部を掴むとそのままぐいっと自分の方へと僕の顔を引き寄せた。上体が前に傾けられて繋がりあった所の角度と深さが変わった。僕の最深部に深草のものが突き立てられる。
「きゃあ…あぁっ!」
思わず深草の肩にしがみつき僕は声を上げた。はじめての時とは違った角度で摺られて思わず身体がふるっと震えた。
「ふふふ…」
さらにぐいっと腰を突き上げながら深草が楽しそうに笑う。
「いい声だ…。」
そう言って僕の顔をさらに引き寄せると唇を乱暴に塞いだ。
「んんん…っ…」
深草の熱い舌が、まるで我が物とばかりに僕の舌を捕らえて弄り、吸い上げる。息もろくにさせてくれぬほどの深い口づけに、閉じたまぶたの奥にちかちかと白い光が明滅する。
「…う…んん…ん…」
深草の舌と燃えるような熱を持った楔に翻弄されながら僕は生まれて初めての情熱の海へと溺れていった。
 
 どれぐらいの時間が過ぎたのだろうか。それすらもわからぬほどに何度も何度も求められてぐったりと力の抜けてしまった僕にきちんと服を着せ、その大きな腕にひょいと抱え上げると深草は僕の顔に自分の顔を触れ合わんばかりに近づけてにやりと笑った。
 
「な、なに…?」
その腕の中で身動きも出きずに僕は戸惑ったように彼の顔を見上げた。
深草はふんと鼻で笑って言った。
「いや、これでお前はその女とは付き合えないなって。」
「そ、そんなことないっ!」
僕はムキになって言い返した。 
「いや、無理だ。…それにマジでお前がそいつと付き合うことになったら…覚悟しとけよ。こんなものじゃすまさねえからな。」
冷たい目をきらりと光らせてそういう深草に、僕の胸は怖いというよりも、なぜか燃えるように熱く心が震えたのだった。
レイプのように強引に関係を結ばされたのになぜか僕には彼を憎く思う気持ちがひとつもわいてこなかった。
 
なぜ…?
 
自分でも説明のつかない感情に僕はすっかり混乱してしまった。




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